火曜会

火曜会は、言葉が帯びる身体性を押し隠すのではなく、それを多焦点的に押し広げることこそが研究行為ではないか考えています。また研究分野の境界は、分野の前提を再度議論する中で、連結器になるとも考えています。

火曜会通信(54) 寛城子事件に至る在華日本領事館警察の自国民保護の実像

 

 

寛城子事件に至る在華日本領事館警察の自国民保護の実像

2017年11月1日

霍耀林

 

十九世紀後半、中国は西洋列強にむりやりに近代的条約外交システムに付け加えられ、従来のいわゆる朝貢システムから脱出し、近代の法的整備が進んでいた。この中で、日中両国の関係も大きな調整を迎えた。特に、日清戦争後、中国の敗戦によって、日本は一躍して、東洋の巨大国として西洋列強と伍し、中国における特殊権益の掠奪をはじめた。この中国の利権を奪われる過程と中国側の絶えず抵抗の間、整備されつつあった法的なシステムの動きや役割が無論重要な課題として注目に値する。

一九一九(大正八)年七月十九日寛城子事件が勃発、この寛城子事件は実際に南満州鉄道長春駅夫の船津藤太郎が中国兵に殴打されたことによって引き起したのである。この単純な日本人被害事件は両軍の衝突事件に発展していく過程において、領事警察の動きが法的システムを背景にし、事件の発生、発展、最後の解決の何れの段階において考察をしてみると、領事警察の横暴、当地守備隊の強硬は正に事件を引起した根源である。

このような報告について、冨山先生をはじめ、火曜会の皆様からいろいろなコメントをいただいた。事件に関する背景の検討はまだ不十分なので、事件について不明なところがまだ存在している。領事館警察のことについて、警察権の行使、警察の対象、駐屯軍が警察権の代行などが近代の法的システムの中に収まるかも問題である。また、法と不法についても検討不十分で、特に、中国側の法的整備のプロセス、中国側の世論への言及がかけている。領事館警察は近代の商人の商業活動において果たした役割なども触れなかったので、これについてもこれから注意しなければならないところである。

上記のような貴重なコメントはこれから私の修正作業にとても役に立つと思います。先生と皆様、今回報告するチャンス、議論の時間を与えてくださって誠にお礼申し上げたいです。今後もよろしくお願いいたします。